痴漢捜査のリアル:警察は犯人をどう追い詰めるのか?4つのポイント

痴漢捜査のリアル:警察は犯人をどう追い詰めるのか?4つのポイント

「痴漢の犯人はどうやって特定されるのか?」「警察から突然呼び出しが…一体何を聞かれるのだろう?」

痴漢事件のニュースは後を絶ちませんが、その裏で警察がどのような捜査を行っているのかは、あまり知られていません。警察は、被害者の証言を元に、科学的かつ執拗な捜査で犯人を追い詰めていきます。

ここでは、痴漢捜査のリアルについて、4つの重要なポイントから解説します。

1. 捜査の原点:被害者・目撃者の「直接目撃」

痴漢捜査の全ての始まりは、被害者や目撃者の証言です。警察がまず最も重視するのは、「犯行の瞬間を、誰が、どのように見ていたか」という点です。

  • 被害者の証言: いつ、どこで、どのくらいの時間、身体のどこを、どのように触られたのか。犯人の顔、服装、髪型、持ち物などの特徴はどうか。被害者の証言が具体的で一貫していることは、捜査の土台となります。
  • 目撃者の証言: 周囲にいた乗客が、犯行そのものや、不自然に密着するなどの状況を目撃していた場合、その証言は被害者の証言を裏付ける非常に強力な証拠となります。

現行犯逮捕のケースはもちろん、後日の捜査においても、これらの直接的な目撃証言が、犯人を特定し、有罪を立証するための最も重要な柱となります。


2. 客観的な証拠の王様:「防犯カメラ」の映像

目撃証言は人の記憶に頼るため、客観性に欠ける側面もあります。そこで警察が次に徹底的に調べるのが、防犯カメラの映像です。

特に重要なのは以下の3つです。

  • 電車内の防犯カメラ: 近年、車内に防犯カメラが設置されている車両が増えています。犯行の瞬間そのものが録画されていれば、それは言い逃れのできない決定的証拠となります。たとえ犯行自体が映っていなくても、被害者のすぐそばにいる映像は、状況証拠として極めて有力です。
  • 駅ホームの防犯カメラ: 被害者や被疑者が電車を乗り降りする際の様子を捉えます。他の乗客との位置関係や、逃走する素振りなどが確認できます。
  • 改札口の防犯カメラ: 被疑者の顔や全身の服装をはっきりと捉えることができ、後述する犯人特定の重要な手がかりとなります。

警察はこれらの映像を執拗にリレー方式で追跡し、被疑者の行動を分刻みで割り出していきます。


3. 逃走しても無駄?「デジタル情報」による犯人特定

痴漢事件では、犯人がその場で取り押さえられず、逃走してしまうケースも少なくありません。しかし、現代の捜査では、デジタルな足跡を辿ることで、高い確率で犯人を特定します。

  1. 映像の確保: まず、駅のホームや改札口の防犯カメラ映像から、被疑者の鮮明な画像を確保します。
  2. ICカードの特定: 次に、確保した画像と改札の通過時刻を照合し、その時刻にその改札を通過したICカード(Suica、PASMOなど)の識別番号を特定します。
  3. 個人情報との照合: そのICカードが記名式(定期券やオートチャージ設定、モバイルSuicaなど)であれば、鉄道会社への照会を通じて、登録されている氏名や連絡先といった個人情報が判明します。
  4. 裏付け捜査: さらに、そのICカードが駅構内のコンビニや自販機で使われていれば、その店舗の防犯カメラ映像も確認します。クレジットカードが使われた場合も同様に、カード会社への照会で個人を特定します。

このように、映像とICカード等の決済情報を組み合わせることで、「この時間に、この場所にいた、この人物は、誰なのか」という点を、ほぼ確実に特定できるのです。


4. 警察の呼び出し:「単なる確認」ではなく「供述固め」

証拠がある程度固まると、警察は逮捕ではなく、まず**「お話を聞かせてください」**と電話で出頭を要請してくることが一般的です。この「任意の事情聴取」は、決して単なる事実確認ではありません。

  • 証拠が固まっている場合: 警察は既に防犯カメラ映像などの客観的証拠を握っています。呼び出しの目的は、本人であることを最終確認し、証拠を突きつけて自白を促すことです。
  • 証拠が弱い(状況証拠しかない)場合: 例えば、「防犯カメラに密着している様子は映っているが、手元は映っていない」というケースです。この場合、警察の最大の目的は、客観的証拠の弱い部分を、本人の「供述」で埋めることです。 当日の行動、服装、電車内での状況などを細かく質問し、被害者の証言と矛盾する点や、不合理な弁解を引き出そうとします。そして、最終的には「やってしまいました」という自白を得ることを目指しています。

いずれにせよ、警察からの呼び出しは、「単なる確認」という軽いものではなく、被疑者として扱われている可能性を意味します。警察は、あなたの供述を得て、検察官が起訴するための「供述調書」という証拠を作成しようとしているのです。安易な受け答えは、その後の人生を大きく左右する可能性があるため、極めて慎重な対応が求められます。


人生を左右する弁護士の役割:なぜ専門家が必要不可欠なのか?

警察の捜査が進むと、逮捕・勾留、そして起訴されて刑事裁判へ…と、あなたの人生を根本から揺るがす事態に発展しかねません。この最悪のシナリオを回避するために、弁護士への依頼は、もはや選択肢ではなく「不可欠な一手」と言えます。

なぜなら、弁護士にはあなた一人では絶対に実現不可能な、2つの強烈なメリットをもたらす力があるからです。

メリット①:不起訴処分の獲得(前科をつけない)

痴漢のような被害者がいる犯罪では、検察官が起訴・不起訴を決める際に「被害者との示談が成立しているか」を極めて重視します。

示談とは、加害者が被害者に謝罪し、示談金を支払うことで、事件の許し(宥恕)を得る手続きです。示談が成立し、被害者の「犯人を罰してほしい」という処罰感情が和らいでいると検察官が判断すれば、不起訴処分となる可能性が飛躍的に高まります。不起訴になれば、刑事裁判は開かれず、前科もつきません。この場合には、前科があると制限のある職業(例えば医者など)へ従事することへの支障を回避できます。

しかし、ここで決定的な問題があります。警察は、加害者本人やその家族に、被害者の連絡先を教えてくれません。 被害者のプライバシー保護や二次被害を防ぐため、当然の措置です。

つまり、被害者と示談交渉ができるのは、公平な第三者である弁護士だけなのです。

弁護士は、検察官を通じて被害者の連絡先を入手し、加害者に代わって慎重に謝罪と交渉を進めます。この示談成立こそが、前科をつけずに社会復帰を果たすための、最も有効で確実な道筋です。

メリット②:早期の身柄解放(逮捕・勾留からの回避)

もし逮捕されてしまうと、警察署の留置場で最大23日間、身柄を拘束される可能性があります。会社や学校に行くこともできず、社会生活に計り知れないダメージを受けます。

弁護士は、この身体拘束を回避し、一日も早く日常生活に戻るための活動を迅速に行います。

  • 逮捕・勾留されないための活動: 検察官や裁判官に対し、「逃亡や証拠隠滅の恐れがない」ことを法的な観点から主張した意見書を提出します。家族による監督を約束する「身元引受書」を整えたり、被害者との示談交渉に既に着手していることを示したりすることで、身柄拘束の必要性がないことを訴えます。
  • 逮捕されてしまった後の活動: 勾留が決まる前の段階で、同様の主張を行い、即時釈放を求めます。

これらの活動は、法律の専門知識と実務経験がなければ不可能です。弁護士が早期に介入することで、逮捕そのものを回避できる可能性や、万が一逮捕されても早期に釈放される可能性が格段に高まります。

痴漢事件は、時間との勝負です。警察から連絡が来た時点、あるいは逮捕されてしまった直後から、あなたの未来を守るためのカウントダウンは始まっています。一人で悩まず、一刻も早く弁護士に相談することが、最悪の事態を避けるための最善の策です。

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