
「警察が刑事告訴を受理しない…」泣き寝入りしないための3つのポイント
「犯罪の被害に遭ったので、犯人を処罰してほしい…」その一心で警察署に駆け込んだのに、「これは事件化が難しい」「民事の問題だから」などと言われ、話すらまともに聞いてもらえなかった。
そんな悔しい経験をした方、あるいはこれから告訴を考えているが不安だという方は少なくないでしょう。
なぜ警察は刑事告訴の受理を渋るのでしょうか?そして、どうすればきちんと受理してもらえるのでしょうか?泣き寝入りしないために知っておくべき3つのポイントを解説します。
ポイント1:警察が告訴の受理を渋る「本音」 👮♂️
まず、なぜ警察が告訴の受理に消極的なのか、その背景を知ることが対策の第一歩です。
- ① 捜査の負担が増える 刑事告訴を受理すると、警察は必ず捜査を開始する義務を負います。現場検証、聞き込み、証拠集め、書類作成…と、膨大な時間と労力がかかります。警察も人手不足であり、多忙な業務の中で、立件・起訴まで持ち込むのが難しそうな案件に時間を使いたくない、というのが正直なところです。
- ② 検挙率への影響 捜査をしても犯人を逮捕できなかったり、証拠不十分で検察が不起訴(起訴しないこと)にしたりすると、その事件は「未解決」扱いになります。警察組織としては、検挙率(事件を解決した割合)が評価に影響するため、最初から勝算の低い事件は避けたいというインセンティブが働きます。
- ③ 「民事不介入」の原則 「お金を貸したのに返してくれない」「契約トラブル」といった個人間・企業間の金銭トラブルに対し、警察は「民事不介入」という原則を持っています。つまり、「それは当事者同士の話し合いか、民事裁判で解決すべき問題で、警察が介入することではありません」というスタンスです。詐欺罪など犯罪に該当する可能性があっても、まずこの原則を理由に、受理を断ろうとするケースが非常に多いです。
ポイント2:実は警察に「受理する義務」がある ⚖️
警察の「本音」は上記のとおりですが、法律上、警察には原則として告訴を受理する義務があります。 これはあなたの権利として、強く知っておくべきことです。
根拠となるのは「犯罪捜査規範」という警察の捜査活動のルールを定めた規則です。
犯罪捜査規範 第63条1項 司法警察員たる警察官は、告訴、告発又は自首をする者があつたときは、管轄区域内の事件であるかどうかを問わず、これを受理しなければならない。
また、過去の裁判例でも、「捜査が困難であるとか、被疑者が起訴される見込みが少ないといった事情は、告訴を受理しない理由にはならない」とはっきり示されています。
つまり、警察が受理を拒否できるのは、
- そもそも内容が「明白に」犯罪に当たらない
- 公訴時効が成立している
- 告訴できる人(被害者本人など)ではない
といった、およそ告訴の要件を形式的に満たしていない明白なケースに限られます。「証拠が弱い」「民事の問題っぽい」といった理由は、本来、受理を拒む正当な理由にはならないのです。
ポイント3:こうすれば受理されやすい!3つの具体策 📝
「受理義務がある」と言っても、ただ口頭で訴えるだけでは、のらりくらりとかわされてしまう可能性が高いです。受理させるためには、警察が「これは捜査せざるを得ない」と判断するような**「お膳立て」**をして、戦略的に臨むことが極めて重要です。
- ①「告訴状」という書面を作成・持参する 口頭での相談ではなく、「告訴状(こうそじょう)」という正式な書面を作成して提出しましょう。誰が(Who)、いつ(When)、どこで(Where)、何を(What)、どのように(How)被害を受けたのか、事実関係を時系列で分かりやすく整理し、どの行為がどの法律(刑法〇〇条違反など)に触れるのかを明記します。これにより、あなたの「本気度」が伝わり、警察も無視できなくなります。
- ② 証拠を可能な限り集め、整理しておく 警察が最も嫌がる「捜査の手間」を、こちらでできるだけ減らしてあげることが重要です。
- メール、LINEのやり取り
- 契約書、念書
- 音声の録音データ、動画
- 被害状況の写真
- 関係者の連絡先リスト これらの証拠を時系列に沿って整理し、告訴状と一緒に提出することで、犯罪の客観的な裏付けとなり、警察も事件の全体像を把握しやすくなります。
- ③ 弁護士に相談し、同行してもらう 最も効果的な方法が、弁護士に依頼することです。弁護士が作成した告訴状は、法的な要件を確実に満たしているため、警察も形式的な不備を理由に断ることができません。さらに、弁護士が警察署へ同行することで、警察に対する強力なプレッシャーとなります。担当者が不当な理由で受理を拒もうとしても、弁護士がその場で法的な根拠を示して反論するため、受理される可能性が飛躍的に高まります。実際に、告訴に慣れた弁護士が対応して受理されないケースは殆ど皆無といっても良い状況です。
まとめ
刑事告訴は、残念ながら「ただ行けば受け付けてくれる」というものではないのが現実です。しかし、警察が受理を渋る理由を理解し、「①告訴状の作成」「②証拠の整理」「③弁護士に依頼する」という対策をしっかり行うことで、その壁を乗り越えることは十分に可能です。
もしあなたが犯罪の被害に遭い、本気で犯人の処罰を望むなら、決して泣き寝入りせず、これらの準備を整えて、あなたの正当な権利を主張してください。