. 寄与分が認められる条件(相続人の場合)
寄与分が認められるには、単なる親族間の助け合いを超えた「特別な寄与」である必要があります。同居していなくても、以下の類型に該当すれば認められる可能性があります。
• 金銭出資型、扶養型: 同居していなくても、被相続人の生活費や医療費、老人ホームの費用などを継続的に負担し、被相続人の出費を抑えることで財産の維持に貢献した場合です。
• 家業従事型: 被相続人が営む自営業や農業を、離れた場所から通って無報酬または低賃金で手伝い、財産の維持・形成を助けた場合です。
• 財産管理型: 被相続人のアパートなどの賃貸物件を無償で管理し、管理費の支出を抑えたり収益を確保したりした場合です。
• 療養看護型(介護など): 被相続人が一人暮らしや施設入所をしていても、相続人が頻繁に通って本来必要だった付添費用や介護サービス費用を免れさせたといえるほどの献身的な介護を行っていれば、認められることがあります。
◦ ただし、単なる「施設への見舞い」程度では、財産上の維持・増加への貢献がないとみなされ、寄与分として認められるのは難しいとされています。
2. 相続人以外の親族による貢献(特別寄与料)
もし「同居親族がいない」状況で、相続人ではない親族(例:長男の妻や、叔父・叔母など)が一人暮らしの被相続人を支えていた場合、2019年の法改正で新設された「特別寄与料(とくべつきよりょう)」という制度を利用できます。
• 対象: 相続人ではない親族(親族とは、6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族を指します)。
• 内容: 被相続人の療養看護等を行い、無償で特別な貢献をした場合、相続人に対して金銭(特別寄与料)を請求できます。
• 条件: 相続人が請求する寄与分と同様、財産の維持または増加への貢献が必要です。
3. 注意すべき点
• 精神的寄与の否定: 被相続人の話し相手になる、精神的な支えになるといった「精神的寄与」については、財産上の効果が認められないため、寄与分・特別寄与料ともに認められません。
• 期間の制限: 寄与分(相続人間の争い)の主張は、原則として相続開始から10年以内に行う必要があります。
寄与分がある場合の相続分の計算
具体的な計算方法と手順は以下の通りです。
1. みなし相続財産の算定
遺産分割の対象となる基礎となる財産(みなし相続財産)を求めます。
これは、相続開始時の財産価値から、特定の相続人の貢献分(寄与分)を差し引き、さらに生前贈与などの特別受益を加算することで算出します。
【計算式】 みなし相続財産 = 相続開始時の財産価額 + 特別受益の額 - 寄与分額
2. 具体的相続分の算定
算出した「みなし相続財産」に、それぞれの法定相続分(または指定相続分)を掛け合わせ、そこから個別の調整(寄与分の加算、特別受益の控除)を行います。
【計算式】 具体的相続分 =(みなし相続財産 × 相続分)+ 寄与分 - 特別受益
この計算により、寄与分が認められた相続人は、本来の相続分に加えて寄与分に相当する額を多く取得できることになります。
3. 寄与分額(寄与行為)の評価方法
具体的相続分を計算するための前提となる「寄与分額」は、その寄与の類型に応じて評価されます。
• 家業従事型: 本来支払われるべき給付額 × (1 - 生活費控除割合) × 寄与期間。
• 金銭出資型: 出資額(不動産の場合は相続開始時の価格)× 裁量割合。
• 療養看護型: 第三者に依頼した場合の報酬相当額 × 療養看護日数 × 裁量割合。
• 扶養型: 負担した扶養料の総額 × 裁量割合。
• 財産管理型: 第三者に依頼した場合の管理費用相当額 × 裁量割合。
4. 注意すべき点
• 算定の基準時: 特別受益や寄与分の評価は、遺産分割時ではなく、原則として相続開始時の時価を基準として評価されます。
• 寄与分の上限: 寄与分は、被相続人が相続開始時に有していた財産の価額から遺贈の価額を控除した額を超えることはできません。• 主張の制限: 相続開始から10年を経過した後の遺産分割については、原則として寄与分の主張による相続分の修正ができなくなるため注意が必要です。