遺言書の有無

相続において遺言書がある場合とない場合では、手続きの優先順位や進め方が大きく異なります。それぞれの主な流れは以下の通りです。

1. 遺言書がある場合の流れ

遺言書がある場合、原則として遺言の内容が法定相続分よりも優先されます。

• 遺言書の捜索と検認:

    ◦ 自宅等で「自筆証書遺言」や「秘密証書遺言」を発見した場合は、勝手に開封せず、家庭裁判所で「検認」という手続きを受ける必要があります。ただし、2020年7月から始まった法務局での保管制度を利用している場合や「公正証書遺言」の場合は検認不要です。

• 遺言の有効性の確認:

    ◦ 署名・押印の有無、日付の特定、遺言能力(認知症の有無など)といった形式的・実質的な要件を満たしているか確認します。

• 遺言執行者の就職:

    ◦ 遺言で「遺言執行者」が指定されている場合、その者が遺産目録の作成や名義変更などの実務を単独で行うことができます。

• 財産の承継(名義変更):

    ◦ 遺言の記載(「相続させる」や「遺贈する」など)に基づき、不動産の登記や預貯金の払い戻し手続きを行います。

• 遺留分侵害額請求:

    ◦ 特定の相続人に全財産を譲るなどの内容で、他の法定相続人の最低限の取り分(遺留分)が侵害されている場合、侵害された相続人は受遺者らに対して金銭の支払いを請求することができます。

2. 遺言書がない場合の流れ

遺言書がない場合は、法律で定められた相続人(法定相続人)の間で話し合いによって分け方を決める必要があります。

• 相続人および相続財産の調査:

    ◦ 被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本を収集し、相続人を確定させます。

    ◦ 預貯金、不動産、有価証券などのプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も漏れなく調査します。

• 相続放棄・限定承認の検討:

    ◦ 借金が多い場合などは、相続開始を知った時から3ヶ月以内に、被相続人の死亡時の住所地を管轄する家庭裁判所へ「相続放棄」または「限定承認」の申述を行う必要があります。

• 遺産分割協議:

    ◦ 相続人全員で、どの財産を誰がどのように引き継ぐかを話し合います。

    ◦ 合意に達した内容は「遺産分割協議書」にまとめ、全員が実印で押印し、印鑑証明書を添付します。書面化は必須ではないものの、紛争防止の点からは確実に作成しましょう。

• 遺産分割調停・審判:

    ◦ 協議がまとまらない(争族になる)場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立て、調停委員を交えて話し合います。

    ◦ 調停でも合意できない場合は審判手続きへ移行し、裁判官が法定相続分や諸般の事情を考慮して分割方法を決定します。

• 名義変更手続き:

    ◦ 成立した遺産分割協議書、または裁判所の調停調書・審判書を用いて、不動産や預貯金の名義変更を行います。

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