婚姻関係が破綻していたとされるケースは?

裁判実務において婚姻関係の破綻とは、「婚姻関係が完全に復元の見込みのない状態に立ち至っていること」を指し、単に夫婦仲が悪化している、あるいは関係が冷え切っている(希薄化している)というだけでは足りないとされています。

具体的な判断基準や指標は、主に以下の通りです。

1. 破綻を基礎づける3つの典型例

  • 別居: 最も重要な外形的指標です。
  • 離婚意思の合致: 夫婦双方が離婚に同意している客観的な事実。
  • 不貞前のDV(身体的暴力): 不貞行為が始まる前から、暴力によって関係が修復不能になっていた場合。

2. 「別居」に関する判断基準

別居は破綻の強力な証拠となりますが、その期間や性質が吟味されます。

  • 期間の長さ: 破綻を認めた裁判例には幅がありますが、ソースでは5ヶ月、1年、4年、5年といった例が紹介されています。ただし、期間が短くても(例:5ヶ月)、白紙の離婚届を交付しているなどの事情があれば破綻が認められることもあります。
  • 別居の意義: 単に夫婦が別々に住んでいるだけでは不十分です。「夫婦仲が悪いことを原因として、夫婦が別れて住むこと」を意味しており、単身赴任や介護など正当な理由による別居は、婚姻関係の破綻とはみなされません
  • 家庭内別居: 同じ建物内に住んでいても一切の交流がない「家庭内別居」の状態は、実務上「別居」と認めるのは難しく、破綻の一形態として個別に主張していく必要があります。

3. 破綻を否定する要素(消極的事情)

相手方が「すでに破綻していた」と主張しても、以下のような「共同生活の実体」が残っている場合は、破綻とはみなされにくい傾向にあります。

  • 共同での活動: 夫婦で食事、買い物、旅行、ライブ等に出掛けている。
  • 家族行事への参加: 子の誕生日祝い、親族の結婚式への出席、実家への帰省などを夫婦・家族として共に行っている。
  • 経済的協力: 家計を同一にしている、住宅ローンの支払いを継続している、配偶者の事業をサポートしている。
  • 頻繁な連絡: SNSやLINEなどで日常的なやり取りが続いている。
  • 性的交渉: 不貞行為の時期と前後して、夫婦間でも性交渉がある場合。

4. 破綻の有無の総合判断

裁判所は、永続的な精神的・肉体的結合を目的とする共同生活を営む真摯な意思が、「夫婦の一方または双方において確定的に喪失したか」、および「共同生活の実体を欠くようになり、回復の見込みが全くない状態か」という観点から、諸般の事情を総合的に考慮して判断します。

実務上、不貞慰謝料を請求された側が「婚姻関係はすでに破綻していた」という反論(破綻の抗弁)を行うことは極めて多いですが、実際にこの主張が認められて請求が棄却される例は稀です。

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