不貞慰謝料を減額するには?

不貞慰謝料の請求を受けた際、その金額を減額、あるいは支払義務そのものを否定するためには、裁判実務で認められている「減額要素」や「抗弁(反論の根拠)」を的確に主張・立証する必要があります。

1. 支払義務そのものを否定する方法(慰謝料ゼロを目指す)

以下の条件に該当する場合、不法行為が成立しないため、慰謝料を支払う必要がなくなります。

  • 婚姻関係の破綻: 不貞行為が始まる前から、夫婦関係が既に客観的に修復不可能な状態(破綻)であった場合、不法行為は成立しません。ただし、この主張(破綻の抗弁)が認められる例は極めて稀です。
  • 故意・過失の否定: 相手が既婚者であることを知らず(故意なし)、かつ知らないことに落ち度がなかった(過失なし)場合です。例えば、独身限定の婚活パーティーで知り合い、相手が徹底して独身を装っていた場合などが該当します。
  • 消滅時効の成立: 不貞の事実と不貞相手を知った時から3年、または不貞行為から20年が経過している場合、時効を援用することで支払いを免れます。

2. 慰謝料額を減額させる要素

不貞の事実は認めるものの、金額を低く抑えるために有効な主張は以下の通りです。

  • 肉体関係の欠如(親密交際にとどまる): 「性交渉(肉体関係)」があったとまでは言えず、キスや抱擁などの「親密な交際」にとどまる場合、慰謝料は大きく下がります(目安として30万円程度)。
  • 不貞相手の主導性: 不貞配偶者の側が積極的に誘惑したり、執拗に関係を求めたり、あるいは「離婚する」「関係は冷え切っている」と嘘をついて関係を主導していた場合、不貞相手(第三者)の責任は軽減される傾向にあります。
  • 期間・頻度の少なさ: 不貞期間が数ヶ月と短かったり、回数が数回程度と少なかったりする場合は、婚姻生活に与えた打撃が比較的小さいとみなされます。
  • 夫婦が離婚に至っていない: 不貞発覚後も夫婦が別居せず、婚姻を継続する場合は、離婚に至る場合に比べて精神的苦痛が少ないと判断され、慰謝料額は低くなります。
  • 既に配偶者から十分な支払いを受けている: 不貞は配偶者と不貞相手の「共同不法行為」です。既に不貞配偶者が高額な解決金を支払っている場合、被害者の損害が補填されたとみなされ、不貞相手が支払うべき残りの額が減額、あるいはゼロになることがあります。

3. 交渉上の有利な事情

  • 謝罪と反省の態度: 不貞を素直に認めて謝罪し、誠実な対応をすることは減額要因になり得ます。逆に、不誠実な弁明に終始したり、居直ったりする態度は増額事由となります。
  • 社会的制裁を受けている: 不貞が原因で職場を解雇されたり、社会的信用を失ったりしている事実は、考慮される場合があります。
  • 求償権(きゅうしょうけん)の放棄: 「自分が支払った慰謝料の半分を、後で不貞配偶者に請求する権利」をあらかじめ放棄することを条件に、提示額そのものを下げさせる交渉が可能です。

結論として、肉体関係の有無や主導権の所在などの客観的事実を整理し、相手方が既に受けた補填状況などを精査した上で、誠実な交渉を行うことが減額への近道となります。

上部へスクロール