慰謝料の増額事由は?

不貞慰謝料の金額は、不貞行為によって「婚姻共同生活の平和」という法的保護に値する利益がどの程度侵害されたかによって算定されます。裁判上の相場は一般的に100万円〜200万円程度ですが、悪質な場合には300万円以上(稀に500万円程度)に増額されることもあります。

1. 婚姻関係に関する要素

夫婦側の事情が深刻であるほど、精神的苦痛が大きいと判断され増額しやすくなります。

  • 婚姻期間が長期であること: 婚姻期間が長いほど、築き上げてきた家庭を破壊されたショックが大きいとみなされます。裁判例では、15年、20年、30年といった長期間の婚姻関係がある場合、増額の要素として考慮されています。
  • 未成熟子(未成年の子)の存在: 夫婦間に幼い子供がいる場合、不貞による家庭崩壊が子に与える影響も考慮され、精神的苦痛が加重されます。

2. 不貞行為の態様に関する要素

不貞行為そのものの悪質性や期間が重視されます。

  • 不貞期間の長期化・回数の多さ: 数年にわたる関係や、頻繁な密会は、婚姻生活への打撃が大きいと判断されます。裁判例では、5年、9年、あるいは14年といった長期間の不貞が認められた場合に高額な慰謝料が認められています。
  • 妊娠・出産の事実: 不貞相手が不貞配偶者の子を妊娠、あるいは出産に至った場合、平穏な婚姻生活を回復不能なまでに破壊する極めて悪質な事態として、大幅な増額事由となります。
  • 不貞のための生活拠点の構築: マンションの一室を借りて同棲したり、頻繁に宿泊を伴う旅行に出かけたりするなど、実質的な二重生活を送っていた場合も悪質性が高いとみなされます。

3. 不貞発覚後の態度や言動

発覚後の不誠実な対応は、被害者の心情をさらに傷つけるものとして増額に影響します。

  • 不貞関係の継続: 不貞が発覚し、関係解消を約束したにもかかわらず関係を継続した場合や、訴訟提起後も不貞行為を続けた場合は、強い非難の対象となります。
  • 反省の欠如・謝罪の拒否: 不貞の事実を全面的に否定し続けたり、不誠実な弁明に終始したり、謝罪の言葉が一切ない場合などは増額要素として指摘されます。
  • 離婚の積極的な督促: 不貞相手が不貞配偶者に対し、配偶者と早期に離婚するよう積極的に働きかけていた場合、家庭崩壊を意図的に助長したとして悪質性が認められます。

4. その他の特殊な事情

  • 精神的打撃による実害: 不貞が原因で配偶者が自暴自棄となり、自殺未遂(首吊りなど)を図ったケースでは、その深刻な結果が増額要素として考慮された例があります。
  • 社会的地位や収入: かつては当事者の学歴や職種が考慮される傾向にありましたが、現代では「婚姻生活の平和維持」を主眼に置くため、資力そのものよりも行為の悪質性が優先されます。ただし、不貞配偶者の収入が極めて高く、離婚による経済的不利益が著しい場合には、例外的に考慮されることがあります。

結論として、「婚姻期間が長く、幼い子がおり、長期間不貞を続け、妊娠・出産に至り、発覚後も居直って関係を続けた」といった事情が重なるほど、慰謝料額は上限(300万円〜)に近づくことになります。

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