不貞慰謝料請求において、相手が「既婚者だと知らなかった」と主張しても、客観的な状況から「既婚者であると気づくべきだった(過失がある)」と判断されることがあります。
1. 住居や生活環境に関する不自然な点
相手の自宅を訪れた際や、住まいの状況から既婚を疑うべきとされるケースです。
- 部屋の間取りと設備: 一人暮らし用ではなく「ファミリータイプのマンション」に住んでいる場合や、寝室に「枕が2つ並んだダブルベッド」がある状況などは、既婚を疑うべき客観的な状況とみなされます。
- 生活用品の形跡: 相手の自宅に自分以外の異性(配偶者)が居住していることを推認させる生活用品や雰囲気があった場合も、注意義務を怠った(過失あり)とされる要因になります。
- 自宅へ招かない: 「独身で一人暮らし」と称しながら、頑なに自宅へ招こうとしない、あるいは常にホテル(特にラブホテル)での会瀬を繰り返すといった行動は、不自然な点として指摘されます。
2. 連絡や交際パターンに関する不自然な点
日常的なやり取りの中で、既婚者特有の制約が見られる場合です。
- 特定の時間帯・曜日の音信不通: 夜間や休日、年末年始などの祝祭日に連絡が取れない、あるいは電話に出られないといった状況が続く場合、家庭があることを疑うべき不自然な点となります。
- 携帯電話を隠す: 頑なに携帯電話を見せようとしない、あるいは連絡手段を厳しく制限している場合も、既婚を隠している兆候とみなされることがあります。
3. 外形的な特徴や社会的属性
- 結婚指輪: 相手が結婚指輪をはめている、あるいは指輪の跡があることを認識していた場合、既婚者であると判断できる有力な手がかりとなります。
- 年齢層: 相手が40代など、統計的に既婚者である蓋然性が高い年齢層である場合、独身であるという言葉を鵜呑みにせず、より慎重に確認すべきであったとされることがあります。
- 出会いのきっかけ: 職場など身元が判明しやすい場所での出会いの場合、婚活サイト等に比べて「知らなかった」という言い訳が通りにくくなります。
4. 「破綻している」という言葉を裏付けなく信じること
相手が既婚者であることを知った後、相手からの「妻とは離婚協議中だ」「婚姻関係はすでに破綻している」といった説明を、客観的な裏付け(証拠)なく信じ込んで関係を継続した場合、原則として過失(あるいは故意)があると判断されます,。
- 実際には「配偶者と同居している」、「家族行事に参加している」、「配偶者の実家に帰省している」といった外形的な事実があるにもかかわらず、相手の言い分だけを信じることは「過失あり」とされる典型的なパターンです。
裁判所は、これらの要素を総合的に考慮し、「一般人を基準とした場合に、既婚者であることを疑うのが通常であるか」という観点から過失の有無を判断します。