求償権とは?

不貞慰謝料における求償権(きゅうしょうけん)とは、不貞の相手方(第三者)が被害配偶者に対して慰謝料を支払った場合に、不貞を行ったもう一方の当事者である配偶者に対し、その負担割合に応じて支払いを求めることができる権利のことです。

1. 求償権が発生する理由

不貞行為は、不貞をした配偶者と不貞相手の二人による「共同不法行為」とみなされます,。

  • 連帯債務: 二人は被害者に対して連帯して慰謝料を支払う義務を負います。被害者は、配偶者と不貞相手のどちらに対しても、あるいは両方に対しても、全額の請求をすることが可能です。
  • 公平な分担: もし不貞相手が被害者へ慰謝料の全額(または自分の負担割合を超える額)を支払った場合、本来共に責任を負うべき配偶者に対し、「あなたの分も肩代わりして支払ったので、負担分を返してください」と請求できるのが求償権です。

2. 負担割合(責任の重さ)の考え方

求償できる金額は、不貞当事者二人の「負担割合」によって決まります。この割合は必ずしも50:50とは限りません。

  • 配偶者の責任が重いとされる傾向: 裁判実務では、婚姻共同生活を維持する義務を直接負っているのは配偶者であるため、不貞相手よりも配偶者側の責任(負担割合)の方が重いと判断されるケースが多く見られます,。
  • 具体例: 例えば、責任の割合が「配偶者 6:不貞相手 4」と判断された場合、不貞相手が被害者に200万円の慰謝料を全額支払ったのであれば、不貞相手は配偶者に対してその6割にあたる120万円を請求できることになります。

3. 解決における「求償権の放棄」

紛争を一回で完全に解決するために、示談(和解)の際には「求償権を放棄する」という条項を盛り込むことが多いです。

  • 循環を避ける: 夫婦が離婚せずに婚姻を継続する場合、不貞相手が被害配偶者に慰謝料を支払い、その後に不貞相手が不貞配偶者に求償権を行使すると、結局は家計内でお金が循環するだけで、紛争が長引く原因となります。
  • 四者ゼロ和解: 双方の夫婦が互いに慰謝料を請求し合わない(求償権も行使しない)内容で合意し、解決を図る手法もあります。

4. 注意点

  • 法的強制の不可: 裁判所は、当事者が合意しない限り、判決で求償権を放棄させることを義務付けることはできません。
  • 求償権行使のリスク: 不貞相手から配偶者へ求償権が行使されると、不貞配偶者が家族に内緒で解決しようとしていた場合、求償の通知によって家族(被害配偶者)に再度その事実が突きつけられるといったリスクも生じます。

求償権は、不貞相手にとっては支払額を実質的に減らす手段となりますが、被害者側から見れば、配偶者に責任を転嫁されることを防ぐために、和解時に慎重に扱うべき権利と言えます。

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