警察には告訴を受け付ける義務がある
告訴とは、犯罪被害にあった人が「犯人を罰してください」と申し出ることです。「犯罪捜査規範」というルールにより、警察は告訴があれば受け付けなければならない義務があります。
しかし実際には、告訴をしても受け付けてもらえないことが少なくありません。
警察が告訴を断る理由(とその問題点)
警察が告訴を断る理由はいくつかありますが、実はどれも断る正当な理由にはなりません。
① 「証拠が足りない」
証拠が十分かどうかを最終的に判断するのは裁判所です。警察が独自に「証拠不足」と決めることはできません。
② 「犯罪にあたらない」
犯罪かどうかを判断するのも裁判所の仕事です。警察が決めることではありません。
③ 「民事(お金の問題)だから警察は関係ない」
「民事不介入」とは、犯罪性のない個人間のトラブルには警察は口を出さない、という考え方です。しかし、詐欺のように個人間のお金のやりとりがあっても犯罪性がある場合は、この考え方はあてはまりません。「民事でも解決できるから刑事はダメ」というのは間違いです。
④ 「犯罪の事実がはっきりしない」
犯罪が起きた日時・場所・方法など最低限の内容が書かれていれば、細かい事実関係は警察が捜査して調べるべきことです。
⑤ 「被害が小さい」
軽微でも犯罪は犯罪です。正式な告訴がある以上、受け付けなければなりません。
⑥ 「犯人が特定できない」
犯人を特定するのは警察の仕事であり、被害者の義務ではありません。
⑦ 「忙しいから」
告訴は国民の権利です。忙しさを理由に断ることはできません。
なぜ断られるのか(正直な話)
警察官も給料が変わらない公務員です。仕事が増えることを嫌がり、「事件は少ない方がいい」と考える人がいるのも現実です。どれだけ丁寧に告訴状を書いても、証拠を揃えても断られるケースがあります。
受け付けてもらうための5つのポイント
① できるだけ証拠を集める
証拠が揃っていると「証拠がない」「犯罪かわからない」と断りにくくなります。犯人の特定につながる証拠や、捜査のきっかけになる証拠が特に大切です。
② 警察・検察に事前に相談する
いきなり告訴状を持ち込むのではなく、事前に相談しておくと不備を指摘してもらえて受理されやすくなります。都道府県の警察本部や警察署に「告訴・告発センター」がある場合もあります。検察庁にも専門の窓口があります。
③ 示談(お金での解決)の予定をはっきり伝えない
「示談を考えている」と伝えると、警察は「どうせ後で取り下げるだろう」と思って受理しなくなることがあります。示談の話は、告訴が受理されるまでははっきり伝えない方が無難です。
④ 警察官とのやりとりを録音しておく
理由なく断られた場合、あとで苦情を申し立てることができます。その際に備えて、ICレコーダーなどで会話を記録しておきましょう。苦情を申し立てることで警察にプレッシャーをかける効果も期待できます。
⑤ 弁護士に相談・依頼する
警察は「行政機関」なので、法律に従って正しく仕事をしなければなりません。告訴を不当に断ることは「違法な状態」にあたります。
刑事告訴に詳しい弁護士なら、それが違法であることを警察に説明して動かすことができます。また、以下のような方法もとることができます。
∙ 警察の上位組織(警察本部など)への働きかけ
∙ 警察を通さず検察に直接告訴する(「直告」)
∙ 警察に対して損害賠償を求める裁判(国家賠償請求)
個人が組織である警察と戦うのは難しいですが、弁護士がいれば対等に戦えます。告訴が受理されずに困ったときは、刑事告訴に力を入れている弁護士に相談してみてください。