告訴・告発の基礎知識と手続きについて

この記事では、刑事訴訟法の規定や判例に基づき、告訴・告発の仕組みや注意点について分かりやすく解説いたします。

1.「告訴」と「告発」の違いとは?

ニュースなどでよく耳にする言葉ですが、法律上、誰が申告するかによって明確に区別されています。

  • 告訴(刑事訴訟法第230条)
    犯罪の被害に遭ったご本人(被害者)や、その法定代理人(親権者など)が、捜査機関(警察や検察)に対して犯罪事実を申告し、犯人の処罰を求める意思表示です。
  • 告発(刑事訴訟法第239条)
    被害者や関係者以外の「第三者(誰でも)」が、犯罪事実を捜査機関に申告し、処罰を求める意思表示です。(※公務員には職務上、告発の義務があります)

被害者以外でも「告訴」できるケース

被害者ご本人のほかにも、以下の方は独自に告訴を行うことが認められています(第231条~第233条)。

  • 法定代理人(親など): 被害者が未成年の場合など。
  • ご遺族(配偶者、直系親族、兄弟姉妹): 被害者がお亡くなりになっている場合(※ただし、被害者の生前の意思に反することはできません)。

2.警察は告訴の受理を拒否できるのか?(告訴の受理義務)

「警察に告訴状を持っていったが、受け取ってもらえなかった」というご相談を非常によく受けます。では、警察は自由に告訴を拒否できるのでしょうか。

結論から申し上げますと、警察の告訴受理拒否は、極めて限定的な場合にしか認められていません。

警察のルールを定めた「犯罪捜査規範」第63条第1項には、次のように明記されています。

「司法警察員たる警察官は、告訴、告発または自首をする者があつたときは、管轄区域内の事件であるかどうかを問わず、この節に定めるところにより、これを受理しなければならない

このように、警察には原則として告訴を「受理する義務」があります。

一方で、昭和59年12月14日の大阪高裁決定では、以下のように示されています。

「(前略)申立の内容その他の資料から判断して、申立にかかる犯罪が成立しないことが明らかであるような場合には、申立を受けた検察官あるいは司法警察員において、告訴として受理することを拒むことができると解するのが相当である」

この判例と犯罪捜査規範を踏まえると、警察が告訴の受理を適法に拒否できるのは、以下のような形式的要件を満たしていないケースに限定されると解釈すべきです。

  • 告訴の期限を過ぎている(期限徒過)
  • 処罰を求める意思がない
  • 一度告訴を取り消した後の「再告訴」である
  • 判例が示すように「犯罪が成立しないことがおよそ明らか」である

つまり、上記のような状況に該当しない限り、警察は犯罪捜査規範63条1項に基づき、告訴を受理する義務を負っているのです。正当な理由なき不受理に対しては、法的根拠をもってしっかりと受理を求めることが重要です。

3.【重要】告訴には「タイムリミット」がある場合があります

犯罪の中には、被害者からの告訴がなければ起訴(裁判にかけること)できない犯罪があります。これを「親告罪(しんこくざい)」と呼びます。(例:名誉毀損罪、侮辱罪、器物損壊罪など)

親告罪の告訴には厳格なタイムリミットがあり、原則として「犯人を知った日から6ヶ月以内」に告訴しなければなりません(第235条)。

インターネット上の誹謗中傷における例外

近年増加しているインターネット上の掲示板やSNSでの誹謗中傷(名誉毀損や侮辱)も親告罪です。しかし、ネット犯罪特有の性質として、「問題の投稿がネット上にアップされ(公開され)続けている限り、犯罪が終了しておらず継続している」と捉えることができます。

犯罪が継続している状態であれば、原則として親告罪の6ヶ月の期間制限はスタートしません。つまり「犯人が誰か分かってから6ヶ月を過ぎてしまった」という場合でも、その書き込みがまだネット上に残っている状態であれば、告訴が可能となるケースがあるのです。

4.告訴を取り消す場合の注意点

「告訴をしたものの、加害者と示談が成立したので取り消したい」といった場合は、起訴される前(公訴の提起があるまで)であれば、告訴を取り消すことができます(第237条1項)

ただし、一度告訴を取り消すと、二度と同じ事件で告訴することはできなくなります(第237条2項)。示談金が支払われる前に告訴を取り消してしまうなど、後戻りできないトラブルを防ぐためにも、取り消しのタイミングは弁護士と慎重に判断する必要があります。

5.共犯者がいる場合の効力

親告罪において、複数人の犯人(共犯)がいる場合、そのうちの1人に対して告訴またはその取り消しを行うと、他の共犯者全員に対しても同じ効力が発生します(第238条・告訴の客観的不可分)
「Aさんは許すが、Bさんは許さない」といった一部の共犯者だけを対象とした告訴や取り消しはできない点に注意が必要です。


まとめ:告訴状の提出や不受理対応は弁護士にご相談ください

告訴は、被害者の方が泣き寝入りせず、加害者に法的な責任を問うための大切な権利です。
警察が告訴の受理を渋るケースは少なくありませんが、お伝えした通り、警察の受理拒否は法的に厳格に制限されています。弁護士が代理人として、犯罪事実を法的に整理した告訴状を作成し、判例や規範に基づいて警察と交渉することで、受理される可能性は大きく高まります。

「自分の被害は告訴の対象になるのだろうか」
「警察に相談に行ったが、民事不介入と言われてしまった」
「ネットの書き込みから時間が経っているが処罰してほしい」

そのような場合は、一人で抱え込まず、まずは当事務所へご相談ください。法律の専門家として、あなたのお話を丁寧に伺い、最適な解決策をご提案いたします。

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