「痴漢ハンター」「盗撮ハンター」の実情──その手口と具体的態様を徹底解説

街頭や駅構内で「あなた、いま盗撮しましたよね」「痴漢したでしょう」と突然声をかけ、恐怖心につけ込んで金銭を巻き上げる集団がいます。いわゆる「痴漢ハンター」「盗撮ハンター」と呼ばれる者たちです。

一見すると被害者(あるいはその関係者)による正当な抗議・示談交渉のように見えるため、声をかけられた側は「自分が悪いことをした」という負い目もあって、言われるがままに数十万円単位の現金を渡してしまいます。しかし、その実態の多くは、示談を装った恐喝・詐欺にほかなりません。


1.そもそも「痴漢ハンター」とは何者か

痴漢ハンターは、被害女性でも、その家族でも、正義感に基づく市民でもありません。人の弱みにつけ込んで金銭を得ることを目的とした集団です。

彼らは、痴漢や盗撮が起こりやすい人通りの多い場所──駅、繁華街のスクランブル、乗換の多いターミナルなど──に張り込み、朝から晩まで通行人を観察しています。そして、少しでも「怪しい動き」をした人物を見つけると、すかさず声をかけます。

重要なのは、彼らが「本当に盗撮・痴漢があったかどうか」をしっかりと確認しているわけではないという点です。彼らが見ているのは、声をかけたときの相手の反応です。動揺したり、目を泳がせたり、言い訳を始めたりすれば、「これはいける」と判断して一気に距離を詰めてきます。


2.手口の全体像──段階を追って解説

痴漢ハンターの手口は、おおむね次のような段階を踏んで進みます。単独犯もいますが、近年は役割を分担した複数人によるチームプレーが目立ちます。

段階①:声かけと「反応読み」

まず一人が近づき、「盗撮しましたよね」「いま撮ってたでしょう」と決めつけるように声をかけます。ここで相手が慌てて否定したり、逆に謝ってしまったりすると、彼らは「やった」という確信(あるいは確信を装う口実)を得ます。

段階②:警察をちらつかせて恐怖を煽る

続いて「このまま警察に行きますよ」「通報しますよ」と切り出します。声をかけられた側は「警察沙汰になれば逮捕される」「職場や家族に知られる」という恐怖で頭が真っ白になり、正常な判断ができなくなります。この心理状態を作り出すことが、彼らの狙いの中核です。

段階③:スマートフォンの取り上げ・確認要求

証拠を押さえるという名目で、相手の携帯電話を取り上げようとしたり、中身を見せるよう要求したりします。ここで撮影データを見せてしまうと、相手に主導権を完全に握られることになります。

段階④:役割分担による「示談」の演出(最重要ポイント)

ここが痴漢ハンターの手口で最も巧妙な部分です。

典型的には、一人が被害女性の「彼氏(あるいは身内)」を装い、もう一人が「仲介役」を務めます

なぜこのような役割分担をするのか。理由は明快で、その方が信用させやすく、かつ圧力をかけやすいからです。

  • 被害者が女性の場合、加害を疑われた男性が女性本人と直接やり取りするのは、双方にとって気まずく、成立しにくい。
  • そこで「男性である彼氏」が出てくれば、”男同士の話”として交渉のテーブルが整い、相手も「彼氏になら払って解決しよう」と応じやすくなる。
  • さらに「仲介役」が「自分が彼氏と君の間を取り持つ」と入ることで、金銭授受の不自然さを覆い隠し、話をまとめやすくする。

実際の事例でも、金銭を受け取る際に「仲介役が彼氏役に現金を手渡す」という一場面を演じることで、あたかも正当な受け渡しであるかのように見せかけていました。

しかし冷静に状況を見れば、不自然な点はいくつもあります。

  • 彼氏を名乗る人物が、被害女性と一緒に行動していない。 本当の彼氏なら、その場に女性と並んでいるか、少なくとも被害の前後で一緒にいるはずです。始終、女性と別行動なのは不自然です。
  • 年齢が明らかに釣り合わない。 女子高生の「彼氏」が、見るからに年上の輩(やから)風の男である、といったケースが典型です。
  • 偶然、都合よく複数人が現れる。 単独行動の被害者に、たまたま「彼氏」と「仲介役」が同時に居合わせる、という状況自体が不自然です。

これらは、彼らが被害者の身内になりすまして金銭を得る口実を作っていることを強く示唆します。

段階⑤:金額の吊り上げ

金額の要求も巧妙です。「いくら払えば許してくれるのか」と尋ねると、あえて「自分で決めろ」と言ってきます。相手が恐る恐る金額を口にすると、「それで足りると思っているのか」と突き放し、結果的にこちらから高い金額を言わせる方向に誘導します。

最終的に30万円程度でまとまることもありますが、これは相場としてはむしろ低い方です。相手の身なりや職業から「もっと払える」と見れば、100万円、あるいはそれ以上を要求してくる者もいます。

段階⑥:近くのATMでの引き出し

「今すぐ払え」と迫り、近くのATMまで同行させて現金を引き出させます。この「その場で引き出させる」というスピード感も、相手に考える時間を与えないための手口です。

段階⑦:「示談書」めいた書面を書かせる

金銭の受け渡しに際して、ATMで出金した際の封筒などにその場で文書を書かせることがあります。内容は「日付・場所」「慰謝料として○○万円を支払う」「二度としない」「刑事事件にしない」といったものです。

これは示談書に見せかけた小道具にすぎません。本来の示談は、こうした殴り書きの一筆でおこなうものではありません。正規の弁護士や当事者が関与する示談では、当事者の本人特定、代理権限の確認、書式の整った合意書の作成が伴います。封筒の裏に慌てて書かせるようなものは、示談の体裁を借りたものにすぎません。

段階⑧:「削除」の撮影

最後に、撮影データを目の前で消させ、その削除の様子を彼らが動画で記録するというパターンもあります。これは「被害者側がきちんと対応した」という形を残すためのものと考えられますが、後述するとおり、彼ら自身の犯罪を裏づける証拠にもなり得ます。


3.なぜ彼らはこの手口を使うのか──背後にある構造

彼らの目的は、あくまで自分たちの金銭です。被害女性のために動いているわけではありません。

このことは、彼らの行動を見れば明らかです。もし本当に被害女性の代理人であれば、受け取った金銭は女性本人(未成年なら親)に渡されるはずです。しかし彼らは、被害女性にそもそも事情を伝えることすらしません。伝えてしまえば、金を女性に渡さなければならなくなるからです。

つまり彼らは、女子高生などの被害者になりすまし、「金を取れそうな相手」を見つけて、その懐から金を引き出し、そのまま自分たちの懐に入れているわけです。被害女性には一円も渡りません。

その結果、実際の被害女性がいた場合には、その女性は二重の被害者になります。姿を撮影されたかもしれないという被害に加え、本来なら受け取れたかもしれない慰謝料をも、無関係の第三者に横取りされてしまうからです。


4.法的な見立て

(1)そもそも撮影行為が犯罪に当たるとは限らない

盗撮を処罰する法律(いわゆる撮影罪)は、下着や性的な部位を狙って撮影する行為などを対象としています。これに対し、服を着た人物を、ある程度距離を置いて後ろ姿で撮影したような場合、スカートの中や下着そのものを狙っていなければ、そもそも犯罪の構成要件を満たさない可能性があります。

もっとも、太ももや下半身付近を大写しにしているような場合には、警察の判断によっては撮影罪や迷惑防止条例違反(つきまとい・卑わいな言動など)に当たると評価されるリスクもあります。ここは個別の映像内容次第であり、一概に「絶対に問題ない」とは言えません。

(2)痴漢ハンターの行為は恐喝・詐欺に当たり得る

一方で、痴漢ハンター側の行為は、被害者の身内を装って金銭を要求する点で詐欺に、警察沙汰をちらつかせて恐怖心を利用し金銭を交付させる点で恐喝に当たり得ます。声をかけられた側は、むしろ犯罪の被害者という立場になり得るのです。

(3)そもそも未成年者に示談の権限はない

見落とされがちですが、被害者が18歳未満の未成年者であれば、本人に示談を成立させる権限はありません。示談の権限を持つのは、原則として親権者(親)です。ましてや「彼氏」を名乗る赤の他人に、示談を受ける権限などありません。

「彼氏が示談に応じて金を受け取る」という構図自体が、法的にはおよそ成り立たないのです。この一点をとっても、彼らの「示談」がいかに欺瞞に満ちたものかが分かります。


5.声をかけられた側が最も気にする「その後、捕まるのか」

相談で最も多いのが「後日、警察に呼び出されたり逮捕されたりするのではないか」という不安です。

結論から言えば、痴漢ハンターに金を払ってしまったケースでは、そこから警察沙汰に発展する可能性はむしろ低いのが通常です。理由は次のとおりです。

彼ら自身が犯罪者だから、警察には行けない。

痴漢ハンターが警察に通報すれば、当然「なぜあなたは被害者からお金を受け取ったのか」が問われます。そこで嘘が露見すれば、彼ら自身の恐喝・詐欺が明るみに出て、自らの首を絞めることになります。自分たちが墓穴を掘るようなことを、彼らはしません。

また、被害女性本人に事情が伝わっていない以上、女性側から被害届が出されることも通常はありません(そもそも痴漢ハンターは女性に何も伝えていないのですから)。

したがって、「そのまま黙っていれば発覚しない可能性が高い」というのが、多くの事例に共通する見立てになります。

ただし、これはあくまで「相手が痴漢ハンターである」という前提での話です。万が一、声をかけてきたのが本物の被害者・関係者であった場合には、被害届が出され、ATMの防犯カメラ映像や取引記録から身元が特定され、後日呼び出しを受ける可能性はゼロではありません。ここは慎重に見極める必要があります。


6.もし呼び出しや連絡があったら

呼び出しは、逮捕を前提としていないからこその手続きですから、当日都合が悪ければ日程の調整を求めることもできます。「その日は難しいので、数日調整させてほしい」と伝えれば、通常は応じてもらえます。

ただし、弁護士を付けずに一人で対応すると、本来言わなくてよいことまで話してしまい、かえって不利な状況に陥るおそれがあります。事情聴取での受け答えは想像以上に難しいものです。呼び出しを受けた場合には、対応する前に、弁護士に依頼されることを強くお勧めします。


7.まとめ──冷静さを取り戻すことが最大の防御

痴漢ハンターの手口は、「恐怖で思考を止めさせ、その場で金を払わせる」という一点に集約されます。彼らはそのために、警察をちらつかせ、彼氏・仲介役という役割を演じ、示談書めいた書面まで用意して、あたかも正当な解決であるかのように演出します。

しかし、その多くは示談を装った恐喝・詐欺です。声をかけられた側が過度に萎縮する必要はありません。大切なのは、その場でパニックにならず、次のように対応することです。

  • その場で現金を渡さない。 ATMへの同行を求められても応じない。
  • 相手の言い分を鵜呑みにしない。 「彼氏」「仲介役」を名乗る不自然さに目を向ける。
  • 一人で判断せず、弁護士に相談する。 撮影行為自体が犯罪に当たるのか、相手の行為が恐喝・詐欺に当たらないか、専門家の目で切り分ける。

「自分がやってしまったかもしれない」という負い目は、相手にとって格好のつけ入る隙です。だからこそ、冷静に法的な見立てを行うことが、最も確実な防御になります。

不安を抱えたまま一人で判断する前に、まずは一度ご相談ください。

当事務所では、個別の事情に応じて、いま取るべき対応を具体的にお伝えします。

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