知らないと損!養育費の差し押さえを劇的に簡単にする新ルール「法定養育費」3つのポイント
養育費の不払いは、子どもの生活を脅かす深刻な問題です。これまでは、養育費を強制的に回収しようとすると、裁判で判決を得るなどの「債務名義」を取得し、複雑な手続きを踏む必要がありました。
しかし、法改正により導入された「法定養育費の先取特権」という制度を使えば、このプロセスが劇的に簡素化されます。この記事では、泣き寝入りを防ぐための強力な新ルールについて、3つの重要なポイントを解説します。
💡 ポイント1:まずは「月額2万円」の確保が可能に
この制度の対象となるのは、子ども一人当たり月額2万円の「法定養育費」です。
これは、養育費の取り決めが全くない場合や、取り決めた金額が月額2万円に満たない場合に、法律が最低限の養育費として定めた金額を確保するためのものです。
例えば、養育費の取り決めがない場合でも、この制度を使えば子ども一人につき月額2万円を請求し、差し押さえることが可能になります。もちろん、これ以上の金額を請求したい場合は、従来通り家庭裁判所の調停などを利用して具体的な金額を定める必要があります。
⚖️ ポイント2:裁判不要!「先取特権」で直接差し押さえ
この制度の最大のメリットは、裁判所の判決などが不要になる点です。
通常、給与などを差し押さえるには、公正証書による合意、調停調書や判決といった「債務名義」が不可欠でした。しかし、この「法定養育費」は先取特権という強力な権利に位置づけられています。
先取特権とは、法律が特別に認めた「他の債権者より優先して支払いを受けられる権利」のことです。これにより、養育費を受け取る親は、債務名義がなくても、家庭裁判所に申し立てることで相手の財産を直接差し押さえる手続きを開始できるようになりました。これにより、時間と費用を大幅に削減できます。
❗️ ポイント3:少額でも効果は絶大!給与の「差押可能額の全額」が対象に
「月額2万円の請求のために、わざわざ差し押さえをしても…」と思うかもしれませんが、この制度は非常に実効性が高いのが特徴です。その理由は、民事執行法152条の規定にあります。
この法律によれば、差し押さえの対象となるのは給与の差押可能額の「全額」です。
具体例で見てみましょう:
- 相手の月給が40万円の場合、法律上の差押可能額は10万円です(原則1/4)。
- あなたが請求する法定養育費が2万円だとしても、裁判所は相手の勤務先に対し「10万円を差し押さえる」という命令を出します。
このように、請求額が少額でも、給与の差押可能額全体に影響が及ぶため、相手に与えるプレッシャーは大きく、支払いを促す強力な動機付けとなります。
この新制度は、養育費の不払いに悩む多くの親にとって、非常に心強い味方です。手続きの詳細は複雑な部分もあるため、利用を検討する際は、一度弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。