不貞調査のために支出した探偵(調査会社)費用については、裁判実務上、その「全て」を回収できるケースは極めて稀であり、一部のみが認められるか、あるいは全く認められないリスクがあります。
ソースに基づき、回収の可否や判断基準について詳細に解説します。
1. 探偵費用が認められる場合の基準と金額
裁判所が探偵費用を「不貞行為と相当因果関係のある損害」と認める場合でも、実際に支出した額ではなく、「相当と認められる限度」に制限される傾向があります。
- 一部認容の例: 4回にわたる調査で合計約153万円を支払ったケースで、裁判所は不貞行為を立証する上で有益であった分(2回目の調査など)を考慮し、40万円のみを損害として認めました。
- 高額支出の例: 約185万円と約216万円の調査料を支払った別の事案においても、不貞の存在を否定していた相手方の責任を追及する必要性は高かったとしつつ、認められた損害額は40万円にとどまっています。
- 比較的高額な認容例: 調査費用として約157万円を支払った事案で、不貞を立証する上で最も重要な証拠であったこと等が考慮され、100万円を損害として認めた裁判例もあります。
このように、たとえ数百万円を支出しても、認められる金額は30万円〜100万円程度の範囲に収まることが多いのが実情です。
2. 探偵費用が「全く認められない」リスク(全面否定説)
一方で、調査費用を不法行為による損害として一切認めない裁判例も多数存在します。
- 自己責任・証拠収集の観点: 調査費用は「いかなる証拠を収集するかは専ら原告(請求側)の判断によるもの」であり、不貞行為そのものと相当因果関係がある損害とはいえないと判断されることがあります。
- 訴訟準備費用としての性質: 「訴訟での立証を確実にするために自らの選択で支出した費用」は、弁護士費用以外の費用について当然に加害者に負担させることは困難であるという考え方です。
- 専門性の否定: 対象者を尾行して写真撮影するなどの行為は「特別な専門性が求められるものとはいえない」として、調査費用の賠償を否定した例もあります。
- 必要性の欠如: 既に相手の氏名や住所を把握しており、再婚の意思を明言しているような状況では、あえて探偵に調査を依頼する必要性はなかったと判断され、請求が棄却されることがあります。
3. 「慰謝料の増額要素」としての考慮
探偵費用そのものを独立した損害項目としては認めないものの、慰謝料の額を算定する際の一事情(増額事由)として考慮するという立場をとる裁判例もあります。
- 調査を依頼せざるを得なかった事情や、それによって一定の経済的負担を被ったことを「精神的苦痛を基礎付ける事情の一つ」として評価し、慰謝料全体を底上げする形での救済が図られる場合があります。
4. まとめと注意点
探偵費用については、以下の点に注意が必要です。
- 証拠の有用性: 調査の結果、不貞の決定的な証拠が得られなかった場合、その費用は「不貞立証に役立っていない」として、より一層認められにくくなります。
- 相手方の否認状況: 相手が不貞を頑なに否定しており、探偵による調査報告書がなければ立証が不可能であったという状況であれば、費用の一部が認められる可能性が高まります。
- 弁護士への相談: 探偵に多額の費用を投じる前に、その調査が裁判でどの程度評価され、費用を回収できる見込みがあるかを弁護士に相談することが推奨されます。