警察による捜索・差押えは、令状主義に基づき、原則として裁判官が発付する令状に従って厳格な手続のもとで実施されます。
1. 令状の請求と審査・発付(裁判所の手続)
捜索差押許可状の発付は、捜査機関(検察官、検察事務官、司法警察員)が裁判官に対して請求することから始まります。
- 相当な理由の疎明: 捜査機関は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる「相当な理由」があることを、捜査記録などの資料によって疎明しなければなりません。
- 対象の特定: 捜索すべき場所、身体、物、および差し押さえるべき物を具体的に特定する必要があります。例えば、マンションの一室を捜索する場合、その管理権が及ぶ範囲(専有部分)に限定されます。
- 事務的プロセス: 裁判所では、請求書の受付後、書記官が形式的な点検を行い、裁判官が実質的な審査を経て許可状に記名押印します。
2. 執行の着手と「必要な処分」
捜査機関が現場に到着し、捜索・差押えを開始する際の具体的な動きは以下の通りです。
- 令状の提示: 原則として、処分を受ける者に対して令状を提示しなければなりません。ただし、薬物事件などで証拠隠滅の蓋然性が極めて高い場合、実効性を確保するために、入室した直後に提示する「事後的提示」が例外的に認められることもあります。
- 「必要な処分」としての破壊活動: 刑事訴訟法111条に基づき、捜査官は捜索の目的を達成するために「錠をはずし、封を開き」といった必要な処分を行うことが認められています。相手方の同意が得られない場合や、鍵の提供を拒否された場合には、必要最小限度の範囲でドアを解錠したり、窓ガラスや金庫を破壊して執行することも適法とされます。
- 現場保存措置: 令状提示の前であっても、捜索場所に立ち入って現状を保存し、関係者による証拠の破壊や隠匿を制止する措置をとることが許容されています。
3. 捜索・差押えの実施と立会い
捜索の過程では、プライバシー保護と適正手続の確保のため、第三者の関与が求められます。
- 立会人の確保: 住居等で捜索を行う場合、住居主やその近親者、あるいは自治体の職員などの立会人を置かなければなりません。
- 捜索の範囲: 令状に記載された場所や物に限定されますが、捜索中に住居人が証拠物を着衣のポケットに隠した場合などは、その身体に対しても捜索が及ぶことがあります。
4. 差押えの完了と記録の交付
証拠物を確保した後には、以下の手続が行われます。
- 押収品目録の交付: 捜査官は、差し押さえた物の名称、数量、形状などを詳細に記載した「押収品目録」を作成し、処分を受けた者に交付しなければなりません。
- 捜索証明書の交付: 証拠物が発見されず捜索のみで終了した場合、希望すれば「捜索証明書」の交付を受けることができます。
5. 特殊な捜索・差押えの手法
現代の捜査では、物理的な場所以外の対象に対しても高度な手法が用いられます。
- 電磁的記録(デジタル証拠): パソコンを差し押さえる際、ネットワークで接続された外部サーバー上のデータを複写して差し押さえる「リモートアクセス」や、サービスプロバイダ等にデータを記録・印刷させて差し押さえる「記録命令付差押え」が行われます。
- 身体に対する強制処分: 覚せい剤事件での強制採尿や、飲酒運転事件での強制採血は、捜索差押許可状や身体検査令状を用い、医師が医学的に相当な方法で行うことを条件として実施されます。被疑者が同行を拒む場合は、採尿場所等まで連行することも許可されます。
6. 夜間執行の制限
私生活の平穏を守るため、日出前または日没後(夜間)に住居等に立ち入って捜索を行うには、令状に「夜間でも執行できる」旨の付記が必要です。ただし、自動車内や人の着衣に対する捜索など、私生活の平穏を害するおそれが低い場合には、夜間執行の許可は不要とされるのが一般的です。