刑事事件は、身体拘束をせずに進む在宅事件と、逮捕・勾留される身柄事件に分かれます。身柄事件は逮捕から起訴・不起訴の判断まで最長23日、在宅事件には期限がなく、数か月単位、長いと1年近くかかることもあります。
3-1 在宅事件の流れ
- 警察からの呼び出し(任意出頭)……逮捕を前提としていないからこその手続なので、都合が悪ければ日程の調整を求めることができます。
- 取調べ・実況見分・スマホ等の任意提出……供述調書が作られます(第6章)。スマホなどが押収されることもありますが、押収自体は裏付け捜査の一環で、直ちに重い処分を意味するものではありません。
- 書類送検(送致)……警察が記録を検察庁に送ります。
- 検察庁からの呼び出し・取調べ
- 処分……不起訴、略式起訴(罰金)、公判請求のいずれか(3-4)。
押さえておきたい点は三つです。
- 告訴が受理された事件は、警察が書類と証拠を速やかに検察官に送る義務を負い(刑事訴訟法242条)、警察限りの微罪処分で終わらせることができません。
- 在宅でも捜査は止まっていません。「逮捕されなかったから安心」ではなく、この期間こそ示談や検察官への意見書の準備を進める時間です。
- ひき逃げのように刑事処分と行政処分(免許取消しなど)が別々に進む類型では、どの「不起訴」を目指すかで行政処分の結論まで変わります。嫌疑不十分の不起訴なら「事故の認識がなかった」という評価が行政処分にも及びやすい一方、起訴猶予では認識があった前提が残り、免許取消しのリスクが残ります。
3-2 身柄事件(逮捕後)の流れ
- 逮捕(通常逮捕・現行犯逮捕など)……警察は48時間以内に、検察官へ送致するか釈放するかを決めます。
- 送致……検察官は受け取ってから24時間以内に、裁判官へ勾留を請求するか釈放するかを決めます。
- 勾留質問・勾留決定……裁判官が勾留を認めると、原則10日間。延長されるとさらに最大10日間です(刑事訴訟法208条)。
- 起訴・不起訴の判断……勾留の満期までに、公判請求、略式起訴、不起訴(または処分保留での釈放)が決まります。
どの段階でも釈放はあり得ます。勾留が認められるのは、住居不定、罪証隠滅のおそれ、逃亡のおそれのいずれかがあり、かつ勾留の必要がある場合です(同法60条1項)。罪名によって勾留される割合は大きく異なり、たとえば痴漢では低く、不同意性交や詐欺ではほとんどが勾留されています(第7章の表)。
面会について
- 逮捕から勾留決定までの間(最大72時間)、家族は面会できません。この間に会えるのは弁護士だけです。
- 勾留決定後は家族も面会できますが、時間・回数・人数に制限があります。共犯者がいる事件などでは、接見禁止がついて家族も会えないことがあります(弁護士は接見可能)。
- 差し入れできる物にも制限があります(ひも付きの衣類は不可など)。留置先の警察署に事前に確認するとスムーズです。
弁護人ができること
- 逮捕直後からの接見で、本人の状況と供述内容を把握し、取調べへの対応方針を決める
- 検察官に勾留請求しないよう意見書を出す、勾留決定や勾留延長に対して準抗告を申し立てる(家族の身元引受書が重要な資料になります)
- 被害者との示談交渉を早期に始める
- 会社や学校への連絡について、本人の意向を家族に伝え、社会的な不利益を最小限にする
3-3 逮捕された直後にすべきこと
- 逮捕直後、「連絡したい弁護士はいるか」と尋ねられます。依頼先の連絡先を控えておくと安心です。知り合いがいなければ当番弁護士を呼ぶこともできます。
- 弁護士と話す前の取調べでは、黙秘権を行使するか、争点となる一点(たとえば「同意のうえであって、意思に反してはいない」)だけを述べ、詳細は弁護士が来てから話す、という対応にとどめるのが安全です。
- ご家族は、その日のうちに弁護士へ相談してください。勾留請求前の数十時間で動けるかどうかが、早期釈放の可否を左右します。
3-4 処分の種類
- 不起訴……嫌疑なし、嫌疑不十分、起訴猶予があります。いずれも前科はつきません(捜査を受けた記録としての前歴は残ります)。
- 略式起訴……100万円以下の罰金・科料が相当な事件で、本人が同意すると、法廷を開かず書面審理で罰金が決まります。早く終わりますが、罰金でも前科はつきます。
- 公判請求……正式な刑事裁判です(第5章)。
この記事を書いた人
藤本 顯人(ふじもと けんと)
第一東京弁護士会所属
警察官として勤務しながら予備試験・司法試験に合格し、弁護士に。
捜査の現場経験をいかし、刑事弁護に注力しています。
クラリア法律事務所
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