起訴されると「被疑者」は「被告人」になります。日本の刑事裁判は起訴後の有罪率が極めて高いため、事実を争わない事件では、主戦場は執行猶予が付くか、刑をどこまで軽くできるかに移ります。
5-1 身柄──起訴後勾留と保釈
- 身柄事件は、起訴後も原則として勾留が続きます。起訴後の勾留期間は2か月で、以後1か月ごとに更新されます。
- 保釈は起訴後に初めて請求できます(起訴前の保釈制度はありません)。一定の除外事由がなければ認められる権利保釈(刑事訴訟法89条)と、裁判所の裁量による保釈(同法90条)があります。
- 保釈保証金の額は事案と資力で決まり、一般的な事件では150万〜300万円程度が目安とされることが多い印象です。条件に違反しなければ、判決後に返還されます。
- 家族の身元引受書、同居・監督体制の具体的な説明が、許可の可否を左右します。
5-2 公判の流れ
- 第1回公判期日……起訴からおおむね1〜2か月後に開かれます。
- 冒頭手続……人定質問、起訴状の朗読、黙秘権の告知、罪状認否。
- 証拠調べ……検察官の立証の後、弁護側が示談書、情状証人(家族・雇用主など)、被告人質問などで立証します。
- 論告・求刑、弁論、最終陳述
- 判決……事実に争いのない事件では、1回の期日で結審し、2週間ほど後に判決が言い渡されることが多いです。
否認事件では、証拠開示や争点整理を経るため、判決まで1年以上かかることも珍しくありません。判決に不服があれば、14日以内に控訴できます。
5-3 量刑と執行猶予
- 2025年6月から、懲役・禁錮は拘禁刑に一本化されました。
- 執行猶予は、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金を言い渡すときに付けることができます(刑法25条)。
- 考慮される主な事情は、犯行の態様と悪質性、被害の程度、示談・被害弁償、前科前歴、反省の深さ、再犯防止の具体策、すでに受けた社会的制裁などです。
- 盗撮・痴漢など性的な問題行動では専門クリニックでの治療、飲酒が絡む事件では断酒の取組みと家族の監督体制が、再犯防止策として具体的に評価されることがあります。
- 起訴後でも示談の意味は大きく、執行猶予の可否や罰金額に影響します。不同意性交等罪のように罰金刑のない罪では、なおさらです。
5-4 前科がもたらす影響
- 略式の罰金でも前科です。医師、教員、公務員、士業などの資格・職業では、欠格事由や懲戒に直結することがあります。
- 子どもと接する仕事について、特定の性犯罪の前科の有無を確認する仕組みも法律で定められました(いわゆる日本版DBS、こども性暴力防止法)。
- だからこそ、可能な限り起訴前の段階で不起訴を目指すことが、刑事弁護の最優先目標になります。
この記事を書いた人
藤本 顯人(ふじもと けんと)
第一東京弁護士会所属
警察官として勤務しながら予備試験・司法試験に合格し、弁護士に。
捜査の現場経験をいかし、刑事弁護に注力しています。
クラリア法律事務所
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